オススメ度 ★★★★
(初期研修医におすすめ)
1. 内容
「入院患者の糖尿病治療の基本はインスリン」ということは、教科書的で誰でも知っていることですが、実際にどう使うのかを書いた本は少ないようです。そして、全ての症例で漫然とスライディングスケール法を使ってはいけないと頭では理解しつつも慣習的にスライディングスケールを使ってしまっている、そういう研修医に向けて書かれた特集です。
各章では下記のような糖尿病診療のポイントが紹介されています。
・高血糖は好中球機能低下を通じて易感染性を招き、創傷治癒を遅延させる。
・感染や周術期など重症患者の血糖コントロール目標値は140-180 mg/dL程度。
・スライディングスケール法は原則として緊急避難的に併用する。
・急速な血糖コントロールにより網膜症・神経症状が悪化することがある。
・インスリンの1日必要総量は体重×0.7~1.0単位程度。
・摂食可能時にはインスリン強化療法を実施。責任インスリン法で投与量調節。
・摂食不可能時には輸液に速効型インスリンを混注+スライディングスケール。
・コントロール不良例はインスリン持続点滴(生食49.5mL+速効型50単位)。
・ステロイド糖尿病は食後血糖上昇が大きい。
・重症患者における血糖測定は血液ガス分析を用いる。
……など、基本を押さえつつ、実践的な内容が豊富です。
2. 本書の特徴
本書1冊で入院患者の血糖コントロールの原則が体系的に学べるようになっています。最後のほうに「初期研修医が病棟でよく困る血糖コントロールのQ&A」というコーナーがあり、病棟管理で困りがちなことについてもしっかりとフォローされています。本書に書いてあるDKAやHHSの治療は具体的な投与量が記載されているので、実際の現場で読みながら使えるかと思います。
3. おわりに
入院患者の血糖コントロールに重点を置いた本はあまり無いので面白く読めました。
血糖コントロールについて疑問がある研修医にはオススメの一冊です。
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