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【書評】 見て読んでわかるNASH/NAFLD診療 【感想】

見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために

オススメ度 ★★★

(基礎から学びたい人におすすめ)

1. 内容

NAFLD/NASH/ALDについて易しく解説されています。薄い本ですが、それぞれの病態の定義、診断基準、鑑別方法、確定診断への検査手順についても様々な文献を基にした十分な記載があります。飲酒も脂肪肝に重要な因子ですが、それ以上に“肥満”が重要な因子であること、糖尿病患者の8人に1人は肝疾患関連死であること、日本人の3~5%がNASHと推定されることなど、NAFLD/NASHが重要な疾患であることが随所に強調されています。

実際すべての肝硬変のうち非B非C肝硬変の占める割合は26%であり、NASHを原因とするものが男性9.5%、女性24%とされており、今後ますます増加していくことが示されています。腹部エコーで脂肪肝をみるときの着眼点(コンベックスよりリニア型が肝表の観察に適しているなど)、focal spared lesionのみかたなど、画像所見の評価法も書いてあります。巻末には各ガイドラインのクリニカルクエスチョンのような、秀逸なQ&Aコーナーがあります。

2. 本書の特徴

最新のNASH/NAFLDガイドラインや各種文献をまとめて、わかりやすく噛み砕いた本です。進展した病態の診断のみではなく、NASH/NAFLDを初期から見逃さないためにどこに注意して診療すべきか、重症化の予防のためにどうすべきかといった、疾患を啓蒙する視点からの記載が目立ちます。

3. おわりに

新薬の登場に伴い、B型肝炎およびC型肝炎は今後減少し、生活習慣を基盤にしたNASH/NAFLDの割合が増えてくることは間違いないと思います。本書は2014年時点での色々なデータをわかりやすくまとめてクリニカルクエスチョンのようになっているため、たいへん面白く読めました。NASH/NAFLDはよくわからないという人には是非一読していただきたい本です。


見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために

見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために

  • 作者: 江口有一郎(佐賀大学医学部肝疾患医療支援学講座教授),小野正文(高知大学医学部消化器内科学講師),角田圭雄(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学講師),兵庫秀幸(広島大学病院消化器・代謝内科診療講師),中島淳(横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授)
  • 出版社/メーカー: 診断と治療社
  • 発売日: 2014/08/29
  • メディア: 単行本
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