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【書評】 急性腹症診療ガイドライン2015 【感想】

急性腹症診療ガイドライン2015

急性腹症診療ガイドライン2015

急性腹症診療ガイドライン出版委員会
・日本腹部救急医学会
・日本医学放射線学会
・日本プライマリ・ケア連合学会
・日本産科婦人科学会
・日本血管外科学会
上記の5学会が総力を挙げて作り上げた急性腹症ガイドラインです。

オススメ度 ★★

(専門知識を学びたい人におすすめ)

1. 目次

第Ⅰ章 クリニカルクエスチョン一覧
第Ⅱ章 ガイドライン作成方法
第Ⅲ章 急性腹症の定義
第Ⅳ章 急性腹症の疫学
第Ⅴ章 急性腹症のアルゴリズム,腹痛部位と疾患
第Ⅵ章 急性腹症の病歴聴取
第Ⅶ章 急性腹症の診察
第Ⅷ章 急性腹症の検査
第Ⅸ章 急性腹症の鑑別診断
第Ⅺ章 急性腹症の初期治療
第Ⅻ章 急性腹症の教育プログラム

2. 内容

本ガイドラインにおいて、急性腹症の定義は“発症1週間以内の急性発症で、手術などの迅速な対応が必要な腹部(胸部等も含む)疾患”とされます。“胸部等も含む”と記載されていますが急性冠症候群などは急性腹症には含まないようです。

第Ⅳ章では、日本のDPCデータを基にした急性腹症の年代別疾患頻度の表があり、どの年代にどの疾患が多いのかということや、腹部CT/USなど画像検査の進歩によって診断が付くケースが増えてきていることがわかります。

第Ⅴ章では、急性腹症のアルゴリズム,腹痛部位と鑑別すべき疾患がまとめられています。救急・当直の際には本表を頭に叩き込んでおきたいものです。

第Ⅵ章の急性腹症の病歴聴取では、「既往歴・手術歴は確認すべきである(推奨度A)」「投与されているすべての薬剤について問診すべきである(推奨度A)」というポイントが目立ちます。個人的な感想ですが、これを疎かにしている人が多いように思います。診断・治療に直結するため当然のことですが限られた時間と対応の中で完璧にこなすのはなかなか難しいでしょうか。

第Ⅶ章 急性腹症の診察では「腸蠕動音は1か所のみの聴診でよい」「肥満度は腹痛の診断に影響を与えない」「直腸診はルーチン検査として勧められない」あたりが目ぼしいポイントでしょうか。外来で行うことのできる身体所見の感度・特異度が表になっていて理解しやすいです。

第Ⅷ章 急性腹症の検査は、おそらく本ガイドラインの中で最も読みたい人が多い章だと思います。「尿管結石の有無は尿潜血では確定・除外できない」「腹部単純X線検査は急性腹症にルーチンで行う意義は乏しい」「急性腹症に超音波検査はスクリーニング検査として勧められる(ただし習熟に努力が必要)」「すべての急性腹症患者がCTの適応となりうる」……etc、当然と思う部分もあれば、新しい知見もあり勉強になります。

3. おわりに

一時的に品切れ状態だったため、本書を手に入れるまで時間がかかりました。将来的には、本ガイドラインは各学会のホームページ上に掲載されるという記載があります。急性腹症に関わる可能性のある全ての人に必読の価値がある一冊です。各施設に一冊は置いてほしいです。是非目を通してみてください。


急性腹症診療ガイドライン2015

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ブラッシュアップ急性腹症

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急性膵炎診療ガイドライン 2015

急性膵炎診療ガイドライン 2015

  • 作者: 急性膵炎診療ガイドライン2015改訂出版委員会,日本腹部救急医学会,厚生労働科学研究費補助金難治性膵疾患に関する調査研究班,日本肝胆膵外科学会,日本膵臓学会,日本医学放射線学会
  • 出版社/メーカー: 金原出版
  • 発売日: 2015/03/12
  • メディア: 単行本
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