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【書評】 この1冊で極める不明熱の診断学 【感想】

この1冊で極める不明熱の診断学―不明熱の不明率を下げるためのガイドブック

オススメ度 ★★★

(基礎から学びたい人におすすめ)

1. 内容

全編にわたって「不明熱は、発熱のみに注目していては診断はつかない。発熱以外の手掛かり(+α)に目を向けないといけない」という理念に基づいた内容です。膨大な鑑別診断の中から、“その疾患らしさ”、“発熱+α”を探れるかどうかが臨床医のセンスであると断言されます。

そして、抗菌薬の投与を待つべき時、抗菌薬を開始すべき時の判断の重要性が実例を用いて示されます。「発熱の原因がわからないときは眼、耳、鼻、口、肛門など孔の周りに注意して診察せよ」などのクリニカルパールも豊富です。

2. 見逃してはいけない不明熱

本書には、救急外来と同じように「見逃してはいけない」という視点からの不明熱の考え方があります。感染性心内膜炎、敗血症、急性胆管炎、薬剤熱、偽膜性腸炎、結核、肝膿瘍、腸腰筋膿瘍……など、本書では見逃してはいけない20の疾患の病態と診断のポイントがあります。

3. 不明熱の診方

現病歴、身体所見で押さえるべきポイント(発熱のOPQRST、熱以外の症状、海外渡航歴、職業)、既往歴、家族歴、歯科治療歴、ペットの有無……それぞれのポイントが詳細に解説されています。この項は物凄い情報量ですが、目を通しておくべき内容に富んでいます。

4. おわりに

どんな人も一度は急性熱性疾患の診断に苦慮したことはあると思います。

個人的な経験では、確定診断まで2週間かかった感染性心内膜炎が印象に残っています。発熱で色々な病院の外来を受診しては抗菌薬(セフェム系)を数日分処方され、処方が切れてから再度発熱を繰り返していました。当院で心エコーをしてようやく診断が付いた典型的なパターンでした。すぐに循環器コンサルトのうえ、近隣の総合病院に転送・待機的に手術することができたようでホッとしたのを覚えています。

不明熱が不明なのは「単に知らない、疑わない」ことが原因である場合があります。不明熱の原因を不明のままにしないためにも一度体系的に勉強しておくことは、決して無駄にならないと断言できます。本書は不明熱の本の中でも非常にオススメの一冊です。手元にあって損しない一冊であると思います。


この1冊で極める不明熱の診断学―不明熱の不明率を下げるためのガイドブック

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