【書評】 ECGケースファイル―心臓病の診療センスを身につける 【感想】

オススメ度　★★★★

1. 内容

ECGブックの姉妹本です。循環器診療のありかたがスーッと身体に染み渡るように作ったそうで、典型的な心電図から非典型的なものまで“61症例”の心電図と解説が記載されています。コラムも充実しています。全編にわたって口語体で、「心電図パーフェクトマニュアル」よりも全体的に易しく読みやすい内容です。

早期再分極（early repolarization）の見方（ST junctionにおける1-4mm、上に凹のST elevation、QRS後半のnotch、ST上昇に伴うT波増高、男性・若年者に多い、1%の心電図に認められる、おもに前胸部誘導に出現する、消失したり間欠的に出没したりする、徐脈時に顕著となり運動により減弱する、Brugadaとの鑑別は難しい）、Ⅲ誘導のみのQ波は正常所見（Ⅱ誘導のQ波は下壁梗塞の特異度が高い）、wide QRS tachycardiaの鑑別（脚ブロック波形による心室頻拍と変行伝導の鑑別）、小児のPQ延長は稀ではない、WenchebachとMobitzⅡ型の見分け方など、覚えておきたい事項がたくさん詰まっています。

2. 本書の特徴

1症例につき2～3ページで、心電図の解説と診断に至った根拠がコンパクトにまとまっています。典型例から非典型例まで心電図所見と実際の臨床診断・対応が記載されています。ワンポイントメッセージが各症例にあり、クリニカルパールのように勉強になります。随所にコラムがあり、通読しやすい構成です。

3. おわりに

「ケースファイルシリーズ」は“心電図の勉強がしたいけど、何から手を付けていいのかわからない”という人にまず一回通読してみてほしい本です。このシリーズを軸として、他の様々な心電図本を読んで、実際の症例検討を繰り返すことで、心電図センスを身につけることができるのではないかと思っています。

ECGケースファイル―心臓病の診療センスを身につける

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