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【書評】 帰してはいけない外来患者 【感想】

帰してはいけない外来患者

オススメ度 ★★★

1. 内容

初めて外来を担当する後期研修医向けに書かれた本です。

・外来診療の極意=“忙しい外来で、効率よく診断を絞り込んでいく。そしてたとえ診断がつかなくても『帰してはいけない患者』を見逃さない”こと、そしてそれを実践するために必要な思考法(見逃してはいけないreg flag sign)が総論では記載されています。

・各論では総論を基にして、「帰してはいけない患者の見分け方」が27個の症候別に示されます。例えば、咽頭痛では吸気時の喘鳴(stridor)や開口障害、嚥下痛、放散耳痛はreg flag signですが、他にも妊婦の劇症型A群溶連菌感染症(分娩型)や急性冠症候群の放散痛としての咽頭痛も記載されています。逆に「帰してもよいサイン」も書かれています(咽頭痛では、上記の随伴症状ない症例や可視範囲に水泡のある咽頭痛)。

・症例検討(ケースブック)では、タイトル通り“帰してはいけない外来患者の症例”が紹介されます。よくある過換気だと思ったら、糖尿病性ケトアシドーシスだった! 発熱・頭痛・嘔気で急性胃腸炎と診断したら、腎盂腎炎だった! 若い女性の失神を神経調節性失神と思っていたら、子宮外妊娠破裂による貧血だった! などなど……読んでいるだけでも恐ろしい症例が31例も紹介されています。

2. 本書の特徴

数少ない外来診療のトレーニング本です。3パート構成で「帰してはいけない患者」にポイントが絞って書いてあります。難解な用語は使わず平易な言葉で書いてあり、初学者でも内容がスッと頭に入ってくるようになっています。

3. おわりに

未だ数少ない後期研修医向けの外来診療のトレーニング本です。誰もが悩みそうなポイントに絞って書いてあるので、鑑別疾患も含めて非常に勉強になります。読んでいてゾッとするような症例が31例も書いてあります。読みながら自身の経験と照らし合わせてみて、いままで何とかなっていたのは偶然に過ぎない……と恐ろしい気持ちになります。
救急外来で遭遇する患者にも当てはまることばかりで、そういう意味では「救急」の本でもあります。後期研修に入る前の初期研修医にもオススメの本です。


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